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狗の掃き溜め小屋

山狗の備忘録的な小屋です

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【読了】沖方丁『天地明察』

天地明察、書籍の存在自体は知っていた。
ただ、なかなか読もうと思う動機はなく読んでいなかった。

自分の歴史に対する興味が薄いというのが背景にあると思う。

今回なぜ読もうと思ったのか、理由は単純である。
近所の書店で有川ひろ著『倒れるときは前のめり』というエッセイ集をたまたま見かけ、昔から有川ひろは大ファンで文庫が出版されれば必ず購入する性分もあり、何も考えずに買った。そこでたまたま『天地明察』の紹介がされていた。

読書感想文「非」推薦図書 というタイトルで紹介されており、その紹介文にシビれた。

―――この『天地明察』は私が興味のない要素ばかりで構成されているのである。それは「数学」と「暦」だ。 ―中略― 思い切りがいいのは、著者は数学や暦について十全に調査しているのに、作中では読者がそれを無理に理解しなくていい構造になっていることだ。―――

作家としてはそういう目線で本を捉えるのか、と目から鱗であった。
とはいえ、自分は数学や暦(というより天文学)に対しては昔から興味があったので楽しめるかなと思った。
読書感想文「非」推薦図書として紹介されていたのも興味をそそったし、一番は作家の名前である。沖方丁といえばファフナー、ファフナーといえば沖方丁。あの人がどんな文章を紡ぐのか純粋に興味があった。
そのため、このエッセイを読んで即AMAZONで購入した。

と、いうわけで読書感想文を書こうと思う。

時代は江戸、徳川4代将軍家綱。800年間使われていた暦(宣明暦)は誤差が生じており、日常生活に影響が出つつあった。碁打ちの家に生まれた安井算哲(渋川春海)が新たな暦として本人が生み出した大和暦を世間に認めさせるストーリー。
文字として書くと簡単な話であるが、この物語の妙は碁と数学(算術)と天文学の見事な調和であると考えている。一介の碁打ちであり、必ずしも家を継ぐ必要がない春海が元から愛好していた算術と天文学の知識に目を付けられ、様々な人と出会い、様々な経験をする。

特筆すべきは算術勝負であろうか。作中に於いて合計で4問出題される。
思わずノートを手に取って本そっちのけで解法を探ってしまった。高校までの数学の知識があればきっと解ける...はず。ちゃんと解けたのは最初の一問だけだったが。

感想文として書こうと思うと難しい。特にこの本はいろいろな話が緻密な計算の上に成り立っており、どこまでが史実でどこからが虚構なのか全くわからない。そこが魅力だと思うのだが、語れば語るほどその部分が薄れてしまいそうになる。

有川先生も書いておられたが、おそらく膨大な取材をしてそこから物語として抽出した部分はごく僅かなのだろう。そこにすべての魅力の源が詰まっていると感じた。

ぜひ読んで体験してもらいたい。


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